満足同盟
風邪を引くと心細くなって、眠ってしまうまででいいから手を握ってほしい、とか、ついつい気弱な言葉をこぼしてしまうものなのだ。しかしこれはどうだろう。
「おい、手だけか」
鼻声で鬼柳が呻く。布団から覗く顔は真っ赤で、目は潤みつつ据わっている。他に何を握れというのか。
(ねつぼうそう・クロウと鬼柳/13.11.7(10)/『風邪』『手足』『変態』shindanmaker.com/14509)
ダークシグナー・不満足
ひやりとする。
浅黒く筋張った、血の通わない股の内側に吸い付いて眉根を寄せる。
けれど冷えた唇は上弦を描く。やめろと呆れ果てた声が降ってきたが鬼柳にやめるつもりなどなく、痕の残らないそこに恭しく頭を垂れた。お互い腕に神を飼っている。呪いがひとつ増えたとて構うまい。
(呪いのようにいきて祝いのようにしのう・ルド京/13.11.2/『アイコン』『ドーピング』『内股』shindanmaker.com/14509)
満足町
この町ではお馴染みの銃型デュエルディスクを相手の額に押し当てる。青褪めて硬直する姿をこれ幸いと、鬼柳は怯えて震える男の内股に空いている方の手を滑らせた。
「賭けは俺の勝ちだぜ。なあラモン?」
ひえっという情けない声も心地よい。形ばかりの銃口を強く押し当てて笑った。
「覚悟しろよ」
(しゅくしゅくとしてせいじつ・遊京/14.2.24/『銃弾』『内股』『フルボッコ』shindanmaker.com/14509)
鬼柳以外
黒薔薇の魔女、などと呼ばれていたのは誰だったか。クロウはビデオカメラを回しながら、レンズの向こうの女にそっと溜息をつく。丸く整えられた爪も、柔らかく上弦を描く唇も、ふっくらと柔らかい頬もやさしい桜色だ。遊星との結婚式で流すための撮影なのに、未練ばかりが胸を刺す。
(みれんしつれん・遊アキ←クロウ/13.11.19(23)/『薔薇色』『録画』『桜並木』 http://shindanmaker.com/14509)
無手札の鬼神
白と黒が錯綜する。進んで、押されて、引いて、のらりくらりと盤を進める内に随分と遠く離れてゆく。最後には白い駒を放り捨て、俺は世界を目指すのだと傲慢な背中が遠ざかる。ただ手を伸ばしたところで目が覚めた。まだ寝ていろと布団に押し込めてくる手のひらに、どちらが夢なのかもう分からない。
(平行世界の夢を見る・VJジャ京/14.1.16/『チェス』『飛行機』『風邪』http://shindanmaker.com/14509)
パラレル
懐かしの流行歌の流れる午後のカフェにて。ジャックがカップを片手に時間を止めて久しい。黒い水面もしんと静まって、もう人肌ほどの温もりも残してはいまい。
糸を切るように、向かいの鬼柳が噴き出した。
「嘘だよ、ばあか」
鬼柳の目端に浮かぶ水が更にジャックの混乱を誘う。
(うそつき・ジャにょた京/13.11.4(9)/『流行』『人肌』『コーヒー』shindanmaker.com/14509)